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伊勢湾台風50年+数値予報50年=台風5日先進路予報

 久しぶりに、気象庁を訪れた。新しく就任した櫻井邦雄気象庁長官、地震火山部長、予報官らと、マスコミ各社の論説委員などとが意見交換した。科学ジャーナリストとして、少し興味を持った二点について、書いてみたい。

 和歌山県潮岬(紀伊半島の突端)に上陸した伊勢湾台風(1959年9月)は台風災害としては、死者・行方不明者が5000人を超えるという戦後最大の被害を出した。主に愛知県、三重県で大きな被害が出たが、伊勢湾での高潮被害がひどかった。この教訓から、災害対策の基本を定めた災害対策基本法が成立する。

 今年は、伊勢湾台風から50年にあたるが、実は、この年には、日本に大型計算機(IBM704)が気象庁に導入された年でもある。今年は、数値予報50年でもある。この50年で、台風の進路、その中心気圧の強さ、拡がりや風力、雨量予報は飛躍的に進歩した。最近の数値予報では、

 台風の3日先進路予報

が行われている。そして、今年度からは、全地球大気圏を約1億個の格子(メッシュ)点で表現し、スーパーコンピューターを使って、それぞれの点で気象要素を弾きだし、時々刻々進路を計算する

 台風の5日先進路予報

が始まった。発生初期には進路変化が著しく、また、晩期には進路は大きく方向を変えることは少ないが、加速度的な動きをすることから、5日先予報は大変に難しいそうだ。5日先では誤差が現在のところ大きく、極端な場合、日本全土が進路にあたることもありそうだ。当面は、5日先については進路予測というよりは、台風が近づいていることを知らせる警戒警報的な意味合いが強い。

 もうひとつ、静岡県に住んでいる関係で興味のある意見交換としては、東海地震など発生した地震を直ちに住民に知らせる

 緊急地震速報の伝え方

である。震源地が近く速報が間に合わない場合、つまり、速報が来る前に、地震のほうが先に届いてしまうという場合、速報をその地域に伝えるかどうか、という問題だ。気象庁としては、間に合わない速報は、伝えないとの方針を打ち出している。なぜなら、そうしないと、地震が起きて大騒ぎになっているところに、遅れてきた役立たずの「速報」が「大きな揺れの地震が来ます、大きな揺れの地震が来ます」ということになり、住民は「また、地震が来るのか」と錯覚するからだ。しかし、知らせないということで、周りの状況がわからず、かえって混乱が起きないか。なんらかの条件、例えば、「この速報は間に合わない地域があります」のひと言を入れて、ともかく情報だけは伝えるなどの工夫をするのはどうか。最も被害が大きい震源域に近いところには、速報が間に合わない可能性が大きいが、そこに肝心の情報が、結果的に人為的に届かないようにするのはおかしい。

 地震火山部長によると、こうした意見は多かったようで、気象庁の評価委員会でも、間に合わない場合は「速報」を出さないことにしたいという気象庁の考え方については再検討中という。速報回数がもう少し増えた段階で、それを再吟味し今年度中にも、結論を出すという。

 東海地震発生速報をできるだけ早く出すためのハード面については、これまで海側の観測体制(既設分は五基)が手薄になっている点を改善するため、

 ケーブル式海底地震計を遠州灘沖-紀伊半島・熊野灘沖に五基増設

し、計10基体制にしたという。ケーブルの陸上げ地点は御前崎の突端で、すでに運用を開始している。これにより、海側に近い震源域で東海地震が発生した場合、現在よりは数秒から数十秒程度早く検知できるので、その分、速報性が高まることが期待される。ただし、地殻の動きをより直接的、かつ正確に知ることができる地震予知に必要な体積ひずみ計は海側には現時点の技術力では設置できないので、代替機器の開発など、この点の改善はなかなか難しい。発生前の予知より、発生後の緊急速報の速報性の向上に力点を置いた対策が今後ますます高まるだろう。

  このケーブル式海底地震計の倍増となる設置は、2008年7月、石川嘉延静岡県知事が平木哲気象庁長官に「緊急地震速報の活用で、強力な支援をお願いしたい」と要請したことに対する一つの解答であろう。

  北朝鮮の二度目の最近の原爆実験についても、気象庁が張り巡らした地震計網から、震源が北朝鮮北端であることを大きなディスプレイがはっきりとらえていたのには少しびっくりした。

 少し、難しい話になったが、久しぶりの勉強会であり、天気予報などの現業部門の現場を見学したのも有益であった。2009.05.28

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