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雑誌ジャーナリズムの受難 若者を置き去りにしたツケ

 月刊『新潮45』(2009年6月号)が、

 雑誌ジャーナリズムは死なない/今こそ勝負の時 !

と悲痛な見出しで叫んでいる。書き手は評論家の坪内祐三氏である。日本を元気にするオピニオン月刊誌『諸君 !』が2009年6月号で休刊することを惜しんでの論考である。『諸君 !』最終号には、「盟友」月刊誌『正論』6月号の広告が巻頭近くに載っていて、

 「諸君!」の四十年に深甚なる敬意を表します。惜別の思いを決意にかえ、「正論」は〝保守〟の松明を掲げ続けます。

と哀悼の辞を述べている。ライバル雑誌も相手が休刊となると、やはり、広告を出したいくらいに、相手読者がわがほうに来てくれる期待からか、うれしいらしい。しかし、小生としては、今や、保守月刊誌としては、「文藝春秋」は別格として、「正論」、「新潮45」、そして、それらよりはあまり知られていないが、新しい日本を創る提言誌「Voice」(PHP研究所)ぐらいになったのか、と寂しくなる。それというのも、この一年で、左から右まで合わせて

 『論座』(朝日新聞社)、『月刊PLAYBOY日本版』(集英社)、『現代』(講談社)、そして、今回の『諸君 !』(文藝春秋社)

という名だたる大出版社の看板とも言える総合月刊誌が休刊に追い込まれているからだ。長引く出版不況という日本国内の事情に、このところの世界経済危機の大波をかぶったことが相次ぐ休刊の大きな理由であろう。

  しかし本当の理由は、若者を置き去りにしたツケであろう。

 この休刊で一番、雑誌ジャーナリズムにとって痛手なのは、作家、ライター、編集者が腕を磨く場が、狭くなったことだ。休刊で、じっくり時間をかけたいい仕事の発表の場が狭まっているのだ。 

 それだから、いきなり単行本というやり方が増えている。新刊発行点数が、20年前には約三万五千点だったのが、最近では倍増の約七万点にも達している。つまり、雑誌連載でじっくり取材し、連載し、さらに単行本化にあたって、練り直すというプロセスが減ってきている。これでは、単行本化したいようないい作品は生まれないだろう。

 教養のデフレ化、新刊発行点数のインフレ化

が進行している。

 その典型が、『諸君 !』の巻頭超辛口コラム「紳士と淑女」である。三十年続いた連載である。まとめて単行本化もされており、深い教養がにじみ出ている。長い雑誌連載であるからこそ、辛口で磨かれた教養に結実したのであろう。いきなり新刊ではとてもこれだけの教養は生まれない。小生の愛読書でもある。著者は、ジャーナリストの

 徳岡孝夫

だったことが、この最終号で明かされている。もともと毎日新聞社会部、「サンデー毎日」編集部に在籍。自決直前の三島由紀夫から手紙や檄文を託された記者で知られる。

 月刊雑誌ジャーナリズムの衰退は、作家やライター、さらに編集者にとって教養の劣化時代の始まりかもしれないと言えば、買いかぶりすぎであろうか。

 「紳士と淑女」ばかりが知られる『諸君 !』だが、科学ジャーナリストとしては、

 サイエンティスト異能列伝(科学作家、竹内薫)

も面白かった。最終回は、

 火山のマグマを透視する

である。簡単に言えば、大気中に飛来する素粒子を使って火山をCTスキャンし、噴火予知に役立てようというユニークな話。東京大学地震研究所の田中宏幸火山噴火予知研究センター特任助教のアッと驚く仕事の紹介である。七頁にわたってイラスト入りで解説している。

 諸君、月刊『諸君 !』は科学紹介でも、決して遅れをとっていなかったことを忘れてはならないだろう。2009.05.21 

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