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『〈盗作〉の文学史 』  グーグル全文書籍検索データベース化

新聞を読むということは、たいていの読者の場合、記事を読むということを指す場合が多い。しかし、一面下の広告の書籍広告にはときどき、記事以上に面白いものが掲載されるから、油断がならない。そんな広告に、4月27日付毎日新聞朝刊の1面下の書籍広告。日本推理作家協会賞を受賞した

 『〈盗作〉の文学史 市場・メディア・著作権』(栗原裕一郎、新曜社)

である。広告文が面白い。

「剽窃、無断引用、著作権侵害、作家のモラルをめぐり繰り広げられる悲喜劇。近代日本文学黎明期から今日まで、文芸作品の「盗作」を徹底的に収集、それが事件としてつくられる過程を冷静に分析・検証する。すべての作家、作家志望者、文学愛好家必携の書。」

と紹介されている。大変な労作であろう。また、面白い。推理を働かせての執念の収集であったのであろう。あっぱれだ。それで、日本推理作家協会賞となったのだろう。

 ところが、そんな苦労をしなくても、簡単に、盗作部分を瞬時にして、見つけ出すことのできる仕組みが世界的に進んでいる。米検索大手グーグルが書籍の本文全体をデジタル化して巨大な電子図書館を構築、ネットで提供するビジネスを展開しようとしている。当面は閲覧は米国内に限られる。対象本は原則、絶版となる前の「現役」書籍は閲覧ができない。そんな制限はあるものの、日本でも普及すれば、貴重な本、絶版本が容易に閲覧できることになり、著者にとっても読者開拓につながり、メリットはありそうだ。

 ところで、もし仮に、このグーグルシステムを盗作探しに利用したらどうなるか。適当な文字列が並んでいる本を「ワンクリック」で検索できることになる。どちらが先に出版されたかもわかるから、盗作の特定はこれまでには考えられないような早さと簡単さで検出が可能になろう。このことは、新聞社の論説委員も含めて物書きとしては、盗作、剽窃に対する抑制力として働くから、グーグルの登場は脅威であろう。

 毎日新聞に上記の広告が出た同じ日の4月27日付読売新聞「社説」では、

 グーグル図書館 活字文化とどう共存するか

という主張を掲げている。厳しく言えば、この問いかけに答えた内容ではないので、主張というほどのものではない。最後の締めくくりは「書籍の電子化の時代を迎え、活字文化をいかに育てていくべきか。グーグル問題を契機に、さらに議論を深める必要がある」と、ばかばかしいほどの決まり文句で結んでいる。「議論を深める必要がある」というのは、日本語に訳すると「私には何が何だか分からない」という意味だ。活字文化の衰退を嘆くばかりで、時代に追いついていけない老論説委員の悲しい性と、とまどいが目に浮かぶ。

 その脅威のせいか、日本の著作権管理団体「日本ビジュアル著作権協会」(東京)の会員の半数が、著作をデータベースに取り込まないよう求める通知を出したと報道されている(4月26日付静岡新聞べた記事「日本の作家ら和解案を拒否/グーグル著作権訴訟)。2009.04.28

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