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映画「四川のうた」 中国の富豪82万人の影で

 世界の工場と言われるくらいに、最近の中国経済の成長はすさまじい。4月17日付静岡新聞朝刊「GLOBAL FLASH」によると、2009年に資産1000万元(約1億5000万円)以上の富豪は、中国全体で82万人以上に達した(中国経済時報)。これは浜松市の人口に相当するから、大変な数字だ。富豪の平均年齢は39歳。さらにそのうち、1億元以上の大富豪は5万1000人、平均年齢は43歳。

 誰しも気になるのは、こんな若さで、大富豪にどのようにしてなれたのか、である。通常考えられるのは、株取引で儲けたとか、起業に成功したとか、が考えられる。北京五輪で稼いだとか、中国にも土地バブルがあるそうだから、それで儲けたということもありそうだ。しかし、実際、この中には、人治主義の中国のことだ、共産党員のわいろ取り、公金横領などでくすねた金も含まれているのだろう。裁判官だって、わいろの出し方によって、判決の書き方を匙加減すると言うから、死刑が無罪になったりするくらいだ。これに泣かされた外国人投資家は、それこそ五万といる。身ぐるみはがされるまで、裁判でわいろ要求されたという米経営者も多い。

 それはともかく、これほどのすさまじい経済発展の裏側、つまり、経済発展に取り残された内陸の人々の生活はいったいどのような激変に見舞われているのだろうか。そんなことは、つい、忘れがちだ。そこに視点を当て、その実態にリアルに迫った映画が「四川のうた」(ジャ・ジャンク監督)である。急速な変化に翻弄される地方の人々の苦しみ、悲しみを四川省の成都の巨大国営軍事工場「420工場」を舞台に描かれている。古都・成都と言えば、かつての蜀の都。劉備や諸葛孔明が活躍した大都市である。最近では、多くの死者を出した四川大地震で世界に知られた。いまでは1000万人以上が住んでいるという。

 それはともかく、最盛期には工員約3万人、家族も入れると10万人以上が工場で暮らしていたが、1990年代に大量解雇の嵐が吹き荒れた。そして、2年前には閉鎖、郊外へ移転。その後には、新しく誕生してきた富豪のための瀟洒な高層マンション群に生まれ変わろうとしている。かつて工場で働いていた労働者にはとても、とても買えない高級マンションである。こうなるまでの様子を実際に工場で働いていた労働者へのインタビューなどで構成し、戦後の中国社会主義が歩んだ歴史を浮かび上がらせている。

 「労働者の国家」がいかに労働者を搾取し、食い物にし、そして、捨て去っているか。

 そのおぞましい姿が、淡々と描かれていることに、驚く。アメリカの強欲資本主義もすさまじいが、いとも簡単に人間を否定する社会主義や、中国式市場経済のおぞましさと比べたら、天国と地獄ぐらいの差があるらしい。ぜひ、見てみたい映画だ。

 「人間の顔をした社会主義」は果たして可能か、そんなことを考えさせてくれる静かなる映画である。2009.04.20

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