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絶望経済  跋扈する「売らんかな」主義

 毎日新聞といえば、昔から、新聞社らしい新聞社として一定の矜持を持っていると自他ともに認めている。部数はほかの全国紙にかなり水をあけられているが、勲章となる日本新聞協会賞の受賞数は、どの新聞社よりも多い。これまでに新聞協会賞を23回受賞している。編集部門は3年連続である。ユニークな人材も少なくない。だから、会社がかたいでしまったのかも知れないという、うがった見方もあるにはある。

 それはともかく、3月31日付毎日新聞「経済観測」欄に、国際公共政策研究センター理事長の田中直毅氏が

 職業人の自己規律

について、書いている。隅っこにある小さな囲み記事ではあるが、なかなかの主張であり、傾聴に値する。田中氏は、今回の経済危機の原因を分析した上で「格付け機関のアナリスト、サブプライム層に対する貸出債権の組成者、証券化に当たってリスクの存在をあいまいにした金融商品設計者などに、職業上の倫理を問う仕組みをわれわれの経済社会の内部に持つべきである」

と鋭い指摘をしている。金融サミットG20開催が始まったことを受けて、こうした規律の仕組みを確認する場にサミットをすべきであるとも主張している。そのとおりである。こんなことは、工学分野では「工学者の工学倫理」として、大学で講義されて久しい。きちんとした教科書も何冊か出版されている。経済学の教育にもこうした職業人が持つべき倫理教育が必要だ。なにしろ、経済学には「金融工学」という分野が最近脚光を浴びていることからも、その必要性は増している。

 こんな立派な発言をしているので、さすがは毎日新聞であると感心していたら、その同じ頁に、小さな囲み記事で、同新聞社が発行している「週刊エコノミスト」4月7日号発売の記事広告(予告記事)が掲載されている。これが、なんと、

特集 絶望経済

というのには、あきれた。歴とした新聞社の歴とした商業経済誌がこんな「売らんかな」主義の特集タイトルをつけるのはあんまりだ。恥を知れと言いたい。これはかつてのトヨタ自動車工場に、期間工員として働いた経験のあるルポライターの名著

『絶望工場』

をまねたものだろう。田中氏の「経済観測」の見識とは、あまりにかけ離れた予告記事だ。

 毎日新聞よ、貧すれば鈍する? 

 ところが、朝日新聞系の朝日新聞出版もなかなかのものだ。最近、こんな恐ろしげでオーバーな題名の経済書を新刊発行している。

 『メルトダウン 21世紀型「金融恐慌」の深層』(榊原英資著)

 榊原氏といえば、「ミスター円」と言われたこともある国際的にもある程度知られたエコノミスト、元旧大蔵省国際金融局長、元旧大蔵省財務官、現在は早稲田大学教授。そんな見識と責任のある人物が、火事場泥棒とまでは言わないまでも、ここぞとばかり「売らんかな」で、原子炉溶融を思い起こさせる、あるいは意味する「メルトダウン」という金融危機をあおるような、しかも、サブタイトルに「金融恐慌」という文字を使うのは、あまりに、不見識。経済政策の専門家として倫理観の欠如した軽率さは、いくら出版社の求めであるとしても慎むべきであろう。国民をことさらに不安に陥れる、ある意味では悪乗りではすまされない悪質な行為ではないか。これでは「ミスター円」が泣く。 2009.04.02

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