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グラミン銀行  もう一つの「貧困ビジネス」 希望経済

 人の人生をわずか1ドル以下で劇的に変えられる経済政策があるということが信じられるだろうか。それがグラミン銀行である。3月31日付静岡新聞「人思い」欄にこのグラミン銀行の創設者、ムハマド・ユヌス氏を紹介している。きっかけは、こうだ。

 バングラデシュ・チッタゴンの貧しい農民四十二人に合計27ドルを貸したことがグラミン(農民)銀行のスタート。一人あたりにすると1ドルにも満たない。このマイクロクレジット(小額無担保融資)と呼ばれる金融は途上国に広がり、2006年のノーベル平和賞を受賞した。

 ユヌス氏はもともと経済学者であるが、自分の学問が祖国バングラデシュでは役に立たないことを思い知らされたことがグラミン銀行を創設しようという動機となった。

 どうしたら、担保もない貧しい農民を貧困から脱出させることができるか

 それが問題であった。途上国には、工場はもちろん、店らしい店もなく、そもそも雇用がない。生活をするには、自分で物をつくり、それを売ってわずかばかりの日銭の現金を稼ぐしかない。物をつくるには、なにがしか資金がいる。その資金は高利で借りるしかない。せっかく物を作って売りさばいてお金を儲けても、利息でほとんどとられて、残りは生活費に消えてしまう。これでは、もともとの借金がなかなか返せない。低利融資をする町の銀行は貧しく担保もない、しかも、女性にお金を貸すところはない。そこで、ユヌス氏自身が債務保証をして、町の銀行から資金を貸し出してもらったという。

 グラミンの特徴は、五人でグループをつくり、助け合いながら使途や融資を受ける金額を決めることだという。工員は農家の窓口で営業をする。担保は取らない。それどころか、子どもを学校に通わせることが条件。これでは、貸しても、お金は戻ってこないだろうと、最初は思われていたという。ところが、なんと、ほとんど戻ってきた。今では、800万人の利用者、ほとんどは女性が利用しているという。

 資本主義では、利益の最大化である。しかし、グラミン銀行は、社会の利益を最大化するためにビジネスをする。つまり、この銀行はいろいろな事業、太陽電池などに投資しているが、そこから得られる利益は、株主に配当しない。それよりも得た利益を再投資に回して、お金をリサイクルする。

 以上は記事の要約である。記事の最後は「社会の問題を解決するために、お金がリサイクルする社会をつくらなければなりません」と結んでいる。メガネを変えると、同じ社会でもそれまでとはまったく違う世界が見えてくるというわけだ。

 グラミン銀行は、いい意味での「貧困ビジネス」なのである。貧しい人々を貧困から脱出させ、自立心を育て、借りたお金で本人が幸せをつかむことができるからだ。その上、子どもたちに教育を受ける機会を与え、子どもにも貧困から抜け出す機会をつくることにも力を入れている。融資を受けるからには、子どもに教育を受けさせる義務も負わせることで、結局は国の将来を支える人材をも育てようとしている。

 経済学者も、もっと社会に役立つよう、その成果を還元してほしい。2009.04.03

 

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