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映画『おくりびと』を送り出した人々  庄内映画村

 ずっと疑問、というか、不思議に思っていたことがあった。映画『おくりびと』の監督、滝田洋二郎氏は、富山県高岡市(平成の大合併前の旧福野町)出身だし、原作となった『納棺夫日記』の著者、青木新門氏は富山県入善町の出身地なのに、そして、北陸の浄土真宗の風土がテーマに深くかかわっているのに、なぜ、撮影が、山形県庄内地方の鶴岡市や酒田市などで撮影されたのだろうか、不思議だった。

 3月7日午後放送のNHK番組「山形映画村」という「やまがたスペシャル」(2007年6月放送の再放送)をみて、はじめて、その疑問が解けた。山形県鶴岡市には、主として時代劇ロケ向けの「庄内映画村」という株式会社(宇生(うじょう)雅明社長)があり、無償で協力するエキストラ集めや、時代劇セットや会場運営をしてくれる会社があり、現代劇『おくりびと』の撮影でもロケ支援を行うなど、支援態勢が富山県など北陸よりも整っていたからだ。隣の市、酒田市には、「北庄内ロケ実行委員会(通称、酒田ロケ協力隊=世話人、萩原吉郎氏)まであることも、『おくりびと』撮影には都合が良かったのではないか。映画の最後に、協力してくれた人々、組織の名前が延々と出てきたが、その中に「庄内地方のみなさん」とか、「酒田市」などの文字もあったのは、こんな事情があったのだ。庄内地方と言えば、映画にも出てきた最上川下流域であり、そこで主人公がチェロを弾くシーンは印象的であった。浄土真宗の風景と、クラシックのチェロとが、とてもよくマッチして、しっくり溶け合っていたように感じた。監督の手腕であろう。

 この庄内映画村は、2006年7月に設立されたというから、今回の受賞は幸先のよい、また、経営的には決して恵まれているわけでもない運営を軌道に乗せるには格好のタイミングであったであろう。

 思うに、『おくりびと』の受賞を単に喜ぶだけでなく、スクリーンの外にある、こうした地方の人たちの持続的な地道な取り組みがあってこそ、栄冠を勝ち取ることがてきたのだということを忘れてはなるまい。

 地域の活性化を担う庄内映画村とは別に、庄内映画村資料館(松ヶ岡開墾場第五番蚕室)まである。庄内地方の人たちの映画にかける静かなる情熱があればこその資料館であろう。私は、北陸地方の出身だが、この映画を見て感動した。それ以上に感動したのは、そのスクリーンの外にある、あるいはスクリーンを影で支えてきた人々の熱き思いだった。

 もう一つ、マスコミが伝えなかったことに、どのようにして、米アカデミー賞外国語映画部門にエントリーできるのか、ということだ。まず、日本国内において、米アカデミー賞選考委員会からの委嘱を受けて、日本映画制作者連盟が、いくつかの候補作から、日本代表作品として出品を決定する。最近では、『たそがれ清兵衛』(2003年公開)、『それでもボクはやっていない』(2007年公開)などが日本代表作品として出品された。2008年公開の『おくりびと』もこうして代表作品として出品された。これまで毎年出品はしているが、最終審査にノミネートされたのは、最近では『たそがれ清兵衛』と、今回の『おくりびと』のみ。『おくりびと』は初めて受賞の栄冠を勝ち取った。候補作品の中から受賞作を選ぶ最終選考は約6000人の米アカデミー会員の投票によって決まるという。こうした仕組みもある程度知っておくことは、いかに受賞が大変か、ということを知る上で大切なことであろう。2009.03.07

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