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百年に一度の魔力   グリーンスパン主義しかり、ポアンカレ予想しかり

 昨年夏以来、「百年に一度」という言葉が、水戸黄門の葵の紋所のついた印篭のような力を持ち、この言葉さえ使えば、使った人の話が単なる言い訳、口実にすぎないのに何でもご無理ごもっともと、通ってしまうという珍現象が起きている。聞いたほうも、なんとなく分かったようにな気になり、煙に巻かれてしまう。そんな効果に悪のりしている経営者は相当いるらしい。

 この言葉は、もともと米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン前議長の米議会証言で使われたことはよく知られている。しかし、どんな状況で話されたのかは、意外と知られていない。昨秋の米下院での証言の中で、同氏は、

 We are in the midist of a once-in-a century credit tsunami

と発言したのだ。そのまま訳せば「われわれは、百年に一度の金融津波のど真ん中にいる」という意味である。ここから、百年に一度の金融危機、世界同時大不況という「枕言葉」が出てきたのである。かつて市場原理主義者で、「金融の神様」「ウォール街の守護神」とまで言われたグリーンスパン氏も、今では「米国を社会主義化に導いた張本人」と酷評されているという。時代が変われば、人の評価も、こんなに変わるのかという典型的な事例だ。百年に一度の大津波に襲われたことで、同氏は迫り来る金融津波の魔力にのみ込まれてしまったのかも知れない。

 ところで、3月9日、NHK番組「百年の難問はなぜ解けたのか ポアンカレ予想」を見た。再放送のスペシャル番組である。宇宙の形を決めるポアンカレ予想。百年間も解かれなかったポアンカレ予想を、ロシア人天才数学者、グレゴリー・ペレルマン博士が2002年から2003年にかけてネット上にポアンカレ予想が正しいことを証明する論文を発表した。その後、複数の数学者グループが4年間をかけて査読し、チェックしたが、いずれのグループも、確かに、問題を解いたことで一致した。ところが、その後、ペレルマン博士は、勤務していた数学研究所を退職し、証明したことに対するフィールズ賞という数学界最大の名誉も100万ドルという賞金も捨て、社会から姿を消してしまったというのである。百年に一度の大難問を解いたことで、同氏もまた、立ち向かった大難問の魔力にのみ込まれてしまったのかも知れない。

 より突っ込んで言えば、百年に一度ということは、一生に一度あるか、どうかの出来事だが、それが起これば、その人の人生を大きく狂わせてしまうということだろう。このことは、経済、数学の分野に限らない、というのが私の「百年の一度」予想である。

 ポアンカレ予想そのものについては、『ポアンカレ予想』(早川書房、2007年)に詳しい。 2009.03.10

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