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もの思う鳥たち 2  奇跡の鳥、ライチョウ

 日本列島がまだ大陸とつながっていた時期、氷河期とともに列島にやってきたライチョウ。氷河期が終わろうとしていた時期に、一部のライチョウは、北方に移動せず日本列島の高山、とりわけ立山などの北アルプスの山頂部に移動することで氷河期後を生き延びてきた。そんな奇跡の生きた化石、立山のライチョウについて、一年間にわたって、いかに四季の移り変わりという環境に適応して生き延びているか、その生態を撮影したNHK番組「奇跡の鳥ライチョウ」(2009年3月1日再放送)を見た。人があまり寄り付かない高山に生息することから、ライチョウはあまり人を恐れない。従って、間近で撮影することができたと撮影に当たった若いディレクターは語っていた。

 そんな状況の中で放送された、オス同士の縄張り争い、子育て映像を見ると、「鳥類たちの知られざる人間性」というサブタイトルのついた先の『もの思う鳥たち』の著者の主張がよく理解できた。つまり、鳥は、あらかじめプログラムされた精巧な機械に過ぎない。従って、刺激に対して反射的に反応しているだけであり、自ら、状況に応じて判断したりするということはないという偏見は間違いであることがよく分かる。

 たとえば、天敵ともいえるハヤブサの仲間が上空に現れると、6羽の子育て中の子どもたちに、特殊な鳴き声で親鳥が合図する。すると、山肌に餌探しで夢中になり散らばっていた小鳥たちは一斉に、身を硬くして身動き一つしなくなり、警戒態勢に入る。これなどは、ある刺激に対して、一定の定められた反応をしているだけという説明では理解できない。刺激がなくても、自ら反応し、身を守る態勢に入るからだ。しかも、母親鳥だけでなく、子どもたちも守るという、人間と同様の「人間性」が観察される。そこには母鳥の状況に応じた的確な判断があり、親鳥と子どもたちとの間にコミュニケーションが取れていることを十分うかがわせる観察映像であった。

 著書の帯にもあるとおり、「鳥はこんなにも人間に近い「知性」と「感情」を持っていた!」ということがよく分かる。これをもって擬人化であるとして、非難する研究者のいるというが、それは遠くからの観察からの観念論であると感じた。この番組からは、遠くからの観察では分からない、鳥類たちの知られざる人間性、というか、鳥と人間の「心の世界」には、人間と機械ほどの差はないことが理解できる。

 結論を言えば、鳥たちも、人間同様、環境に対して自ら判断し、選択したりして、主体性を持って生きている。「主体性の進化論」もこうした観点から考えるべきではないか。ダーウィンの進化論、それに続くネオ・ダーウィニズムは、当時の物理学の発見(個性や心を持たない物質やエネルギーに関する発見)に刺激された「非主体性の進化論」である。当時の時代背景を色濃く反映したものであり、ダーウィンの進化論は、この点で基本的に間違いではないか、という印象を強く持った。

 動物、あるいは植物も、物質やエネルギーとは異なり、個性と主体性を持って、環境に働きかけて進化してきた。その意味では、

 変わるべき時が来たら、種は一斉に短時間に変わるという

 今西錦司氏の「主体性の進化論」

は正しい。その時が来たら個体それぞれが、溜め込んだ突然変異を総動員して、体内の多重フィードバックを通じて、主体的に環境に適応する。ダーウィンが『種の起源』で言うように、動物たちは単に、環境に振り回される存在ではない。環境適応では、日本の高山のライチョウは、夏と冬では、体の羽の色が天敵に狙われにくいように変わるが、これに対し、季節の移り変わりのほとんどない北方のシベリアに氷河期の終わりとともに移動してしていった雷鳥には、こうした体色の変化はないのではないか。年中、白色ではないかと想像する。こうした日本の高山のライチョウと、シベリアのライチョウの違いは、ライチョウ自身の、多重フィードバックという主体的な適応によってなされたものではないか。

 撮影に当たった若いディレクターは、最初はライチョウといっても「遠い存在」であったが、撮影が進むにつれ、鳥たちにも人間同様の感情があることに感動したという趣旨の感想を述べていたのが印象的であった。

 この番組には、立山のライチョウの生態を30年以上にわたって調査している富山雷鳥研究会のメンバーも登場していた。雷鳥は、現在、全国の高山地帯に推定で3000羽ぐらいいるという。そのうち、立山にはオス、メスあわせて約50羽が生息しているとのことである。天敵に狙われたりしてこれ以上減れば、絶滅危惧種になるぎりぎりの生息数であろう。

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