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小惑星、地球かすめる  今、上空にある脅威

 小さく掲載されていても、ドキンとさせられる新聞記事があるものだ。それも全世界にかかわることで、しかも重大な人的被害が出る可能性があるとなれば、見逃せない。そんな記事が3月8日付静岡新聞の囲み記事「GLOBAL FLASH」に出ていた。べた一段で

 「小惑星、地球かすめる」

 ワシントン時事電であるが、7日までに米NASAが発表した。どの程度のかすめかただったのかというと、なんと、これが、今月2日に地球半径(約6000キロ㍍)の12倍強のところを秒速8.8キロ㍍の猛スピードで通過したという。小惑星が月の軌道のかなり外側を通過するということはときどきある。しかし、今回は月軌道までの距離の約五分の一というきわどいところだった。言い換えると、地上から見て、静止衛星軌道の二倍の高さにすぎない。まさに、かすめるという表現がぴったりだろう。しかも、小惑星の大きさは、直径21㍍×47㍍とかなり大きい。地球に対して秒速8.8キロ㍍のスピードと言えば、地球の重力にとらえられる可能性もあった(秒速11キロ㍍以上だと重力を振り切れる)。これがもし、地球に衝突すれば、1908年のシベリア隕石爆発規模の大惨事を引き起こす破壊力を持っていたと推定される。この惨事では、シベリアのほとんどの樹木がなぎ倒されたという。もし、今回、人口密集地帯のヨーロッパ大陸、北米大陸に衝突すれば、大惨事という表現ではすまなかっただろう。

 (地球半径の12倍強ということは、クロスセクションで考えて、半径の二乗比で、1/144の確率で衝突する可能性があった。つまり、今回のようなイベントが百五十回ぐらい起こると、そのうち一回は、中心の地球半径内に小惑星が偶然に通過することになり、地球に大惨事を引き起こすことになるという計算になる。シベリア大惨事から、ちょうど百年立つ。今回のような「かすり」が何年に一度起こるのか知らないが、そろそろ要注意と警戒した方がよさそうだ。もっとも、小惑星とも呼べないような、ごくごく微小な小石程度のものは毎日のように、天空から大気圏に突入していて、一条の流星となって消え、あるいはその一部は地上にまで落ちて来て、隕石として発見されることはよく知られている)

 NASAによると、月軌道の内側を通過する程度にまで地球に接近する可能性がある小惑星は、これまでに約6000個も発見されており、そのうち約千個が、地球に衝突する危険性があると判断されているという。実際に衝突するかどうかについては、小惑星自身が小さく見つけにくい上に、精度の高い軌道要素を決定する必要があり、観測には困難を伴い、小惑星がかなり地球に近づいてからでないと正確な判断はできない。今回も、発見と軌道の確定は「かすめる」数日前だった。

 となると、これら約一千個については、今後、できるだけ常時監視するとともに、観測データの収集と軌道決定も必要になってくる。日本にも、NPO法人日本スペースガード協会(観測センター=岡山県美星町)という組織があり、そうした監視・観測を強化しているのは心強い。

 ただ、衝突することが分かったとしても、衝突自体を確実に回避することは、現時点の科学技術ではほぼ不可能である。したがって、どう避難するかが、大きな課題となる。問題は、衝突が確実になり、また、地球上のどこに落下するのかを正確に予測し、その結果、海洋に衝突すると予測された場合、巨大津波が予想されるので、予測が出てから1、2日の間に海岸から離れて、少なくとも数百メートル級の内陸部の山頂に避難する。地表に衝突すると予測された場合、1、2日で、今回のような小惑星の場合、衝突地点からおおむね百キロメートル以上離れた場所に避難する必要がある。衝突の際に発生する衝撃波で地上にある構築物はほとんど吹き飛ばされるだろう。短期間の避難ではパニックにならないよう、あらかじめ事態を知らせておいて、いざというときに備えて、冷静な避難行動が取れるようにしておく必要がある。 

  地上の醜いいざこざにばかり、気を取られていると、上空からの壊滅的な突然の脅威にさらされていることを忘れそうになる。今回の小惑星は、その脅威に対する備えを怠るなという警告と受け止めたい。なお、時事の記事は、毎日新聞にも二段で掲載されていた。2009.03.09

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