映画・テレビ

2014年3月25日 (火)

生物の多様性で豊かな里海に 瀬戸内海

Imgp3386_1 (2014.03.24) 何気なくみた日曜日夜のNHK総合番組

 里海 瀬戸内海

だったが、豊かな浜名湖、佐鳴湖を考える場合、貴重な成功事例としておおいに参考になると見終わって感じた。

 カキの養殖の不振など、10年前まではやせ細った瀬戸内海というイメージだったが、この4、5年、漁協関係者は瀬戸内海が戻ってきたという大きな手ごたえを感じているという。

 この20年間の漁業関係者の地道な努力が実lり、カキの養殖がこのところ、好調なのだ。

 養殖いかだに吊るしたホタテの貝殻にびっしりとカキの幼生が取り付いている。成貝も盛んにオスもメスも卵子や精子を飛ばしている。取り付いていない幼生も瀬戸内海にその成長とタイミングを合わせるようにゆっくりと滞留しながら、浮遊している。

 このことが、幼生を狙ってさまざまな生き物を生息可能にしている。しかも、その滞留性を高める場、あるいは寄ってくる魚たちの生息場として、アマモが重要な位置を占めるようになってきていた。

 ● 岡山県備前市日生では

 番組では、とくにアマモの回復が著しい岡山県備前市日生(ひなせ)の漁協の取り組みが紹介されていた。ここでは1980年代ほとんどアマモがなくなっていたが。取り組みで最近では1950年代の最盛期の3分の1ぐらいに回復している。

 瀬戸内海を里海ととらえて、人の手を少しだけ加える。水質浄化だけに注目するのではなく、

 Imgp3385_1 生物の多様性

を生み出す工夫を続けてきたらしい。

 水生のアマモの育成

に力を入れたこともその一つ。アマモ場は生物の多様性を確保する場であり、そのことがカキの収量を増やすことでもあるととらえた。アマモは、夏場の水温の上昇を抑えたりもするので、カキ幼生の死亡率を低下させるのにも役立つ。

 カキの養殖は瀬戸内海の過剰な富栄養化物質を吸収して里海の水質浄化に寄与する(生き物の生息できない貧酸素水塊の防止)。この水質の透明度がよくなることで光合成が盛んになりアマモも増殖する。増殖すれば、アマモの葉に付着するものがカキのえさになり、カキ自身の収量がよくなる。

 つまりカキ自身もほかの生き物が生息できるように環境を整えている。水質の調整を人手でことさらにする必要はない。幼生や植物プランクトンなど食物連鎖の基底の調整は、そこに入り込んでいる生物自身に任せよ、という教訓かもしれない。

 ● アマモ場のハウスキーピング

 カキの養殖と沈水性のアマモ場の持ちつ持たれつのサイクルがうまく働くためには、

 人手でアマモ場の手入れ

を欠かさないことが必要。間引くことで、アマモ場とそうでないところの境を多くし、そこに多様な魚介類を呼び込むという。そして、そこで卵を産み、この卵が多様な魚介類の取れる里海の豊かさのもととなる。

 むかしのようにアマモのモク採りをする。そのモクを農業用肥料だけでなくさまざまに、上手に利用する。簡単に言えば、アマモが増えすぎないよう、減りすぎないようにして、多様な生き物がそこに生息できるよう

 アマモ場のハウスキーピング

をする。カキいかだの近くにアマモの種まきをすることも含めてそのことに汗をかいて30年。瀬戸内海は豊かな里海として、この4、5年、よみがえるまでになった。

 しかし、よく考えてみると、1950年代までの漁業関係者ならこんなことは単に常識であったのではないだろうか。

 ● 水質浄化の幻想

 生き物が持続できる新しい里海の水環境づくりに、忘れかけている数十年前の知恵を生かし、豊かな里海を取り戻したい。

 人手で強引に水質浄化さえすれば、海も湖沼も再び豊かによみがえるというのは善意の誤解であり、幻想だということにそろそろ気づくべきではないか。特に佐鳴湖のような汽水湖では、それは大いなる幻想だろう。

  ● 里海創生論

 九州大学応用力学研究所の柳哲雄氏には、備前市の取り組みも含めた

 里海創生における藻場の役割

という資料がある。

  (写真は、いずれもNHKテレビ番組の画面より。写真上=カキ養殖いかだ。3月23日夜)

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2014年2月10日 (月)

水質だけでは水環境のコントロールはできない

(2014.02.09)  先日、放送大学の大学院専門科目(環境工学)をBSで見ていたら、

 COD値などの水質保全だけでは水環境保全のコントロールは不十分

という、ちょっとびっくりするような講義が行なわれていた。COD水質至上主義はだめだというのだ。担当講師は放送大学教授の岡田光正氏(専門は生態工学)。

 そのことを相関図としてわかりやすくフリップにまとめていた。

 Imgp2842_1 それが写真上( = 同講義から。以下同様)。つまり、

 水質、水量、水辺生物、水生生物

の間に、相互依存関係がある。水量が増えれば、水質は良くなる。減ればどうしても水質は悪化する。水質は魚などの水生生物はもちろん、水辺生物の生息に大きな影響を与える。それらの生物や生息環境がまためぐりめぐって水質に、時には意外な形で影響する。

 つまり、因果関係が1対1の関係ではなく、しかも原因と結果が線形でもない(つまり、原因と結果とがカップルしていて明確に分離できない)。こうなると、たとえば、水質のちょっとした変化が、水生生物の漁獲量に劇的な変化、あるいは思惑とは逆センスな変化を引き起こすこともあり得ることになる。

 ● 新指標の溶存酸素量(DO)と透明度

 そこで、新たな水質目標として、もう一つ、生物の生きやすさについて

 水中に実際に溶けている酸素量=溶存酸素量(DO)という指標

を、環境工学では重要視するようになってきている。

 定量解析が可能な指標として、死がいなどの有機物側の指標に、生きた生物側の指標を組み合わせることで水環境をより的確に把握しようというわけだ。この把握は、水環境のコントロールには欠かせない前提である。

 Imgp2844_1_2 DO値が大きいほど、生物は生息しやすくなる。これに対し、COD値は、水の中の有機物の死がいなどの汚れを化学的に有機物ではないものに分解するのに必要な酸素量であり、生息しやすさとは直結しない。ただ、COD値が大きいほど、湖などの有機物による汚れがひどいことを示しているにすぎない。

 極端な話、十分COD値は下がったが、それとともに、そこの生物は激減、またはほとんど死に絶えたということも起こりえる。

  この湖の各層ごとのDO値の変化と透明度低下とのかかわりに注意したのが、写真中の図。

 湖に排出さける有機物や窒素・リンが増加すれば、富栄養化による植物プランクトンの増加も手伝って、水中の有機物濃度は高まるだろう。これらの有機物は水底に落ちていき、水底に堆積する。温かい季節になるとバクテリアによる分解作用により、低層水の貧酸素化が進行する。つまり、図にある

 底層DOの低下

につながる。これが、さらにその下の底泥DOの消費につながり、泥の中の生き物の生息に重大な影響を及ぼすことが考えられる。また、有機物の落下の増加(レイクスノー?)は、透明度の低下を当然に招くだろう。

 大雑把ながら、この図から、表層で光合成をしながら食物連鎖の底辺を支える植物プランクトンが低層DO低下に大きな影響を与えることがわかる。

 Imgp2856_1_2

 最近の環境工学、とくにその中の生態工学では、生き物が生息しやすい水環境の保全・管理や、さらには生態系の再生・回復を、生物の潜在力を引き出しながら人為的にコントロールしようとしている。

 講義では、写真下のようなフリップにまとめられていた。

 Imgp2866_1

 ● 注記 汽水湖の水質保全にCOD指標は有効か

 以前のこのブログ(2013年8月19日付の山室真澄講演)では、

 COD値は水質保全の指標にはならない。少なくとも水底が定期的に洗われるような汽水域では指標にはならない

と指摘された。COD値というのは、

 湖中の有機物量+水底にたまった有機物量

できまる。しかし、水底が干満でゆれる汽水湖では、水底からいくらでも有機物が染み出してきて、少なくとも汽水湖ではCOD値対策は効果が上がらない。

 山室氏ほかの新著

 『貧酸素水塊 現状と対策』(生物研究社、2013年4月)

によると、汽水域にかぎらず、水質が改善されない原因として

 「水質汚濁防止法や湖沼法の諸施策により負荷削減がおこなわれたにもかかわらず、この30年間、閉鎖性水域の水質改善が(思惑通りに)進まなかった理由は明確になっていない。窒素・リン負荷量が本当は減っていない、堆積物に蓄積した栄養塩類の溶出が起きている、難分解性の有機物が増加している、地球温暖化など気候的要因が影響しているなどの理由があげられ、より詳細な汚濁機構の研究が求められている。」

と指摘している。

 この事実と指摘は、水質だけに限らず、水環境を全体として思惑通りに人為的にコントロールすることがいかに至難であるかを、如実に示している。

 佐鳴湖は比較的に浅く、面積的にも比較的小さな汽水湖であり、その水環境では人為的な影響を受けやすい。そんな湖が大都市近郊に、しかも囲まれるように位置しているのだから、コントロールの至難さはなおさらだろう。

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2014年1月20日 (月)

辻野副会長から「エチオピア通信」第2報

2014.01.21) 日本政府(JICA)からエチオピアのアセラ大学にシニア海外ボランティア理科教員として派遣されている副会長の辻野兼範さんから、

  エチオピア通信 第2報

が届きました( 注記 )。年賀状を兼ねた写真つきの現地報告です。

 20140118cahdb9d1_1_2 

 上記の写真は、エチオピアの朝日なのでしょう。お正月にふさわしい雄大な写真です。相当な高原地帯から撮影した

 アフリカの日の出

なのがわかります。

 通信の要約は次の通りです。

 今回は、日本では見られないこちらの生活、光景の写真を添付(補遺)します。というのも最近では大学の木が盛んに伐採されています。ユーカリの木でオーストラリアから移植した外来種です。

 水の吸い上げが早く、成長も早い。真っ直ぐに成長するので建築材として利用価値が高いそうです。しかし、他の在来樹木の生長を阻害するため、伐採されているのです。その伐 採する作業の写真を添付しました。斧1本ですべての作業を見事に行い、機械は一切使いません。まるで昔の木こりの生活を見ているようで心打たれる思いがします。

 エチオピアの女性は働き者で、伐採した木を燃料用に家まで運ぶのも女性の仕事。薪や牛糞を調理用の燃料に使うのも一般的で、この運搬も女性たちです。男たちは、家事はほとんどしません。屋外で働いているのは常に女性たちで、昔の日本の古い習 慣を見ているようです。(以上)

 具体的なその現場の様子を収めた写真は下の「補遺」からご覧いただけます。

● 注記

 第1報(2013年11月)は、

  http://lowell.cocolog-nifty.com/30nenme/2013/12/--1-201311-72a8.html

  です。

● 補遺 斧だけで見事ユーカリをばっさり

 「kikori.doc」をダウンロード

 カラー写真が多数あり、現地の生き生きとした様子がよくわかります。

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2014年1月19日 (日)

テレビで紹介「佐鳴湖シジミハウス」

(2014.01.19)  戸田三津夫会長から、メールで会員にお知らせがあったように、1月19日日曜日午前のだいいちテレビ「おいしい楽園」という番組の一部として佐鳴湖シジミハウス(浜松市中区佐鳴台湖岸)が取り上げられ、県民に紹介されました。

 出演して対応したのは、戸田会長と大学院生二人などでした。井上も拝見し、カメラに収めましたので、参考に、このブログ下欄に静止画像としてアップしておきます。

 プロジェクトのことが少しずつ県民に知られるようになり、また佐鳴湖ヤマトシジミを

 「浜松のトキ」

という言い方で再生の位置づけや意義についても番組に登場するなど、知名度だけでなく、再生することの意味についても少しずつ知られるようになってきているようです。

 これからは、湖中放流段階での再生の成果を目に見える形で出すこと、おいしい食べ方の開発なども視野に入れていくこと-などが大事であると番組を拝見して痛感しました。

 戸田会長、ご苦労様でした。

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2013年10月14日 (月)

琵琶湖のセタシジミ漁

Imgp1344_1 (2013.10.14)  先日、BSプレミアムの

 ぐるっと1周 琵琶湖水辺紀行

という番組を見た(10月12日夜)。偶然だが、

 南端の瀬田唐橋近くで行なわれているセタシジミ漁

が紹介されていた。

 Imgp1348_1 地元の漁師、太田豊一(80歳)さんが、長さ5メートルほどの竹棹の先につけた網でシジミを巧みにとる技を実際に見せてくれていた。レポーターも挑戦していたが、太田さんのようにはとれない。ほとんどが巻貝のタニシだった。

  竹棹のしなりをたくみに利用して、シジミのいそうな湖底の深いところを掘るように網を入れるというようなコツがありそうだ。ここにも熟練の技と勘がいることが分かる。

 Imgp1352_1 最近はセタシジミも思うようには取れなくなっているとのことだった。昔、たとえば昭和30年代には、シジミ漁だけで一家の生計が成り立っていたという。その当時の写真も紹介されていた(滋賀県によると、平成に入り激減、最近ではピークだった往時の1%程度にまで減っている。このことから種苗技術の開発を始めている)。

 シジミの育成には、水底のシジミが酸欠にならないように、写真のように水生の藻を刈り取ることが、やはり必要だと太田さんが強調していたのが印象に残った。

 ここでとれたシジミは、当然だが、京都の料理店にも出荷されているらしい。

 Imgp1351_1 最後に、番組で紹介されていたシジミ料理を下に写真で示しておく。

 以上は、今後のプロジェクト協議会の活動にも役立つだろう。

Imgp1356_1

 ● 番外 琵琶湖の外来種

 琵琶湖にも、大量にブラックバスやブルーギルなどの外来種がいる。琵琶湖では、 これを、

 ワンちゃん ネコちゃん かりかりおやつ

 「おさかなまるごと」

というペットフードにして販売している。

 Imgp1366_1_2  

 ( 写真は、すべて同「水辺紀行」番組の画面より)

 ● 注記

 セタシジミは、ほぼ琵琶湖南岸にしか生息しない琵琶湖の固有種(淡水種。雌雄異体)。

 日本に生息するシジミは、この固有種のほか、川などに生息するマシジミ(淡水種。雌雄同体)、日本での食用のほとんどを占めるヤマトシジミ(汽水種、雌雄異体。佐鳴湖や宍道湖)の三種。

 日本では、細い水路で海につながっている汽水湖、たとえば、北海道・網走湖(網走川)、青森県津軽・十三湖(じゅうさんこ、岩木川)などでも、シジミはとれる。

 海外では、繁殖力が非常に強いことで知られるタイワンシジミ(淡水種、雌雄同体)が有名。食用。

 清流に生息するマシジミと間違われやすいが、殻の色が黄味を帯びていたり、下水などの汚染水を好む傾向があるなどの点で違いがある。正確には遺伝子解析で判定する。

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2013年7月 8日 (月)

沈黙の海、アサリはどこへいったか  

(2013.07.08)  アサリは淡水が流れ込む砂地の浅瀬の海に多く生息する。東海3県は、国内産アサリの約8割を賄う。

 Photoそのアサリの収穫量が、このところ激減している。

  そのせいで浜名湖弁天島の今夏の潮干狩りは戦後初の中止となった。なにしろ今年は4、5年前の3分の1程度にまで減っているというのだ。

 環境変化に強いといわれているアサリに今、何が起きているのか。

 先月14日夜のNHKローカルドキュメンタリー番組「ナビゲーション」でその謎を追い、再生の可能性を探った

 沈黙の海 激減する国産アサリ (NHK三重)

が放送された。

 激減の原因について要点をまとめると、

 海底の砂地に硫化水素など毒を含んだ黒い還元層(酸素の少ない泥層)がアサリに覆いかぶさるように厚く堆積していること、流れ込む川の上流域の保水力が低下し、泥の流出が増加していること、生活廃水が増加していること、温暖化などで水質や生息環境が悪化している可能性があること

などが挙げられていた。

 還元層対策では、アサリの成育場の干潟の、いわば〝海の畑〟を耕し、かき混ぜる、保水力対策では、植林を行なう

などが具体的な取り組みとともに紹介されていた。

 ● 三重県の取り組み紹介

 生息環境の改善で注目されたのは、

 三重県鳥羽市浦村の伊勢湾での取り組み(浅尾大輔代表「浦村アサリ研究会」)。

   カキ殻を小さく加工した「ケアシェル」や小石、あるいは透明なペットボトルを入れたネット袋を干潮時に砂底にうずめる。海水に浮遊するアサリ幼生を取り込み、しかも生育を効率的に促し、魚の餌になることも防ぐ工夫だという。

 ネット袋に入れた稚貝の養殖についても、砂底に置かず海中に吊るす。このことで水底の還元層の影響を回避する方法がよい成果を上げていると紹介されていた。

 こうした取り組みを総合的に行なうことで、激減を食い止めることができるという番組だった。

 しかし、天然ものだけでなく、育てる漁業への転換としてアサリの種苗は不可欠であろう。

 ● 浜名漁協採貝組合連合会でも種苗始まる

 番組では紹介されなかったが、浜名漁協採貝組合連合会(山本兼三会長)でも、新設のアサリ種苗センター(弁天島乙女園内)で今春から種苗の取り組みが始まっている。

 これについては、浜名湖のアサリ復活種苗作戦という一連のプロジェクト

 http://shlakers.hamazo.tv/e4602438.html 

などが参考になる。

 ( 写真= 浜名湖弁天島、背景は浜名大橋。釣りエサの「弁ジャム屋」提供 )

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